和歌山

2025.10.11

【和歌山県他主催】 冷水浦・空き家再生からはじまる、新しい地域共創の体験ツアー

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みなさん、こんにちは! 今回ご紹介するのは、和歌山県・紀伊半島に位置する海南市・冷水浦(しみずうら)を舞台にした、空き家再生をきっかけに、地域共創の今とこれからを学び・体感できるツアーです。

北に海、南に山を望む、自然豊かな小さな漁村・冷水浦。かつて漁業とともに栄えたこの土地も、時代とともに人口は減少し、いまでは空き家が目立つようになりました。全国どこでも耳にするようになったこの課題に対し、冷水浦では「空き家」を起点に、地域に新たな可能性を生み出そうとする動きが生まれています。

今回のツアーでは、そのリアルな現場を訪ね、その現場から何を学び、どう関わることができるのかを、実際に体験していきます。建築や地域共創に関心のある方にとっては、単なる見学を超え、地域と継続的につながるヒントや実践に出会える場となるはずです。

こうした取り組みの中心にいるのが、本ツアーのナビゲーターであり、「Re SHIMIZU-URA PROJECT(リ・シミズウラ・プロジェクト)」を主宰するいとうともひささん。県外からこの地に移住し、空き家を再生しながら、人と人、土地と人をつなぐ活動を続けています。

これまでのキャリアとともに、「Re SHIMIZU-URA PROJECT」の歩み、そして今回のツアーへの思いについて、いとうさんにお話を伺いました。

古くから水産資源として、シラスの水揚げが盛んな冷水漁港
・ツアー参加する前におすすめ
ツアー開催前に、内容をより深く知り楽しめる講座を開催します。詳細は下記リンクよりご覧ください。 (参加費 無料)
【和歌山・冷水浦発、共創のまち育て~眠れる町に灯をともす いとうともひさの暮らしづくり~】 
9月20日(土)14:00-15:30 阪急グランドビル開催 / オンライン開催

【目次】

「音楽と建築は似ている」ー建築の道へ進むきっかけ

_いとうさんは最初どのような関心やきっかけから、建築の道に進まれたのですか?

いとうともひささん(以下I)_学生時代はギター、ベースにドラムと音楽に夢中な学生でした。その頃出会った美術の先生が「音楽は譜面があり演奏者がいる。建築も図面があって工事する職人がいる。だから音楽と建築は似てるんだ」と話していて、その言葉に触発されて大学では建築の道に進みました。

当時はスクラップ&ビルドが盛んで、環境問題への意識もようやく浸透し始めた頃。いわゆる建築の花形である美術館や高層ビルといった設計課題にはモチベーションが湧かなくて。自ら道具を持って手を動かす、小さなスケールのものづくりをしたいという気持ちが強かったですね。

_キャリアのスタートが大工さんというのも、その視点と思いがベースにあるのですね。

I_そうですね。たとえば、日常で自分のテーブルをつくる時間なんて、なかなか取れないじゃないですか。特に社会に出てからは、「建築って、お金で回っている世界なんだ」という実感が強くなりました。お金に振り回される建築に、ちょっと疲れてしまって…。自分の手でテーブルをつくるような、もっと素朴なものづくりがしたいなと思ったんです。田舎に移って、人間らしい建築がしたい。そう思うようになりました。

_田舎に移って人間らしい建築をするという目的から、どうやって冷水浦に辿り着いたんですか?

I_しばらく物件を探して、各地をウロウロしていました。たとえば奈良の吉野や生駒、兵庫の丹波篠山などですね。でも、そうした地域にはすでにブランド色があるように感じて。色のついていないような田舎に行きたいと思ったんです。移住者コミュニティがしっかり形成されている地域だと、思い切ったことをすると迷惑をかけちゃう気もしていて。そんな中、海南市の冷水浦なんて、聞いたこともないし、見たこともないし、誰も知らない。「これはいいぞ」と思って(笑)。あとはシンプルに、海があったからですね。

令和4年12月時点の自治会の調査によると、冷水浦には 現在151 世帯・400名ほどが 暮らしているという。

「まちづくり」より「つくる楽しさ」

_いとうさんが冷水浦へ来てから、どのように空き家再生プロジェクトを展開していったのですか?

I_移住してすぐ、友人たちと地域工房をつくる「Re SHIMIZU-URA PROJECT」を立ち上げました。空き家を購入して、自分たちで改修しながら、その技術をレクチャーしていったんです。

空き家再生をしているというと、結果的に「まちづくり」をしているように見られがちなんですが、誤解を恐れずに言うと、僕は、いわゆる“まちづくり”を目的にしているわけではありません。スケールはもっと小さいんです。

たとえば、さっき話したように「今日はテーブルをつくろう」とか、「花壇の整備をしてみようかな」とか。そうやって積み重ねていった延長線上に、みんなが使えるものが、まちの中にできたらいいなという感覚なんですね。

いとうさんにとって2011年に東日本大震災の復興に携わった影響も大きかった。
被災時に自ら自分の場所を直せる力をつけることの大切さを感じたと言う
地域工房をきっかけに30 代の男性2名が移住。⽇本各地から主に建築学生が学びに訪れる

_目の届く範囲の作業の積み重ねが、やがてまちのスケールに繋がっていくんですね。

I_そのプロセスを、いかに楽しめるかということの方が、自分には大事なんです。お金を取らずに、みんなで面白い場所をつくりたいと思っていて。お金を儲けるための経済活動を目指すのであれば、そもそも過疎集落でやるべきではないとも思っています。

でも、たとえば被災時などの有事の際に、誰もが自分で自分の場所を直せる力をつけること。そして、空き家を活用して冷水浦に移住したい人たちの助けになること。そういったことを目指して活動しています。

「冷水千軒井戸八百」と謳われたほど湧き水に恵まれ、およそ200もの井戸がある冷水浦。
眠ったままになっていた井戸を整備し「災害時協力井戸」として登録

空き家は地域と人を繋ぐ、コミュニティハブ

_現在、具体的に空き家が再生されている場所は、どのようになっているのですか?

I_今、僕たちが所有している空き家は全部で17軒あります。面積でいうと、山も含めておよそ1100㎡くらいの広大な土地です。そのうち、お店は3軒あります。ひとつは、「チャイとコーヒーとクラフトビール」の店。もうひとつは、「糸と手芸」という手芸屋さん。そして、お好み焼き屋さんです。

手芸屋さんは、近所のおばあちゃんたちが集まる場所になっていて、お好み焼き屋さんは、地元のお母さんがお店にあるものや、お客さんが持ってきた食材を焼くスタイル。だから、メニューもないんですよ。

いとうさんが店主を務めるお店「チャイとコーヒーとクラフトビール」は、
集落の人々や移住を検討する人が気軽に立ち寄れる"集落の居間"となっている
外の人が冷水浦の面白さを知り、中の人が集落の価値を再認識することを目指している

_和やかな、人の顔が見えるコミュニティが想像できますね。自由な雰囲気が伝わってきます。

I_飲食業とか宿泊業とか、生業としてやるよりも、本当に家庭内で起こる何気ない出来事が存在するような場所にしたいと思っています。だから、お好み焼き屋さんも集落のダイニングのような役割を担っていて、週末には人が集まって、みんなでご飯を食べています。そういった状況に触れてもらえたら、きっとちょっと感動するんじゃないかなと思っています。

冷水浦では、いつも港や路地裏で近所の人々の楽しそうな井戸端会議が

「空き家をプレゼントしたいんです」

_ 場所が人々をつないで、コミュニティが自然に生まれていく良い例ですね。いとうさんの活動を知って、県外から訪れる方もいらっしゃるのですか?

I_そうですね。視察も増えてきていますし、「自分も手伝いたい」と手を挙げてくれる学生さんも増えています。特に建築を学んでいる学生は、興味を持ってくれることが多いですね。何か得られるものがあると思って来てくれているんじゃないかな。ちなみに、今回のツアーに参加してくださった方には、空き家をプレゼントしたいとも思っています。

近所のおばあちゃんたちが手芸をきっかけに集う場として生まれた手芸屋さん「糸と手芸」

_えっ! そうなんですか!? 家をプレゼントとは、かなり斬新なアイデアですね。(笑)

I_家は売るんじゃなくて、本当にあげた方がいいと思っています。できるだけハードルを下げることで、地域に来やすくなるし、過疎集落の生存戦略としても、本当に有効だと思うんです。プレゼントする代わりに、こちらからも審査をさせてもらいます。「この方なら」と思えたら、こちらからお願いして、ぜひ家をもらってほしいと思っています。

お金がなくても楽しめる、新しい資本主義

_空き家を“資産”としてではなく、コミュニティへの“入口”にしていく発想がすごくユニークですね。これまでの常識とは、まったく違う価値観だと感じます。

I_移住促進にも、結構な額の税金が使われていますよね。空き家もケアしなきゃいけないし、維持費用だってかかる。であれば、いっそあげてしまった方が、コスト的にも抑えられるんじゃないかと思うんです。たとえば、一軒あたり100万円くらいの家を買って、手直しして、欲しい人にあげたら、全部埋まると思うんですよ。そうすれば、自然と空き家はなくなっていくんじゃないかな。

現在空き家は約100軒。1年に1軒買い取りながら、新施設のオープンを目指している

_仲介業者も必要なくてシンプルですね。お互いの顔も見える。今は新築物件が買えないくらい高値の市場ですが、その真逆の路線ですね。

I_そうですね。だから、全部家をあげられたら「コンプリート!」くらいのつもりでいます。お金がなくても、全然楽しい。そうなったら、世界は変わってくるんじゃないかなと思っていて。それをどう共有していこうかと考えると、まだアイデア段階なんですが、冷水浦にはないような産業、たとえばIT事業者の方なんかをテナントに誘致するとか。テナント代は要らないので、むしろ「ぜひ入ってください!」って言っちゃいますね。

事業資金を公開し、冷水浦の経済活動を透明化していきたいといとうさんは話す

_テナント代が0円だと、参入障壁がぐっと低くなって入りやすいですね。

I_ひとつだけお願いがあるとすれば、仕事は9時から15時くらいまでにしてほしいんです。冷水浦の子どもたちが放課後、大工さんやプログラマー、料理人など、いろんなプロの皆さんと自然に触れ合うきっかけをつくってあげたいと思っていて。仕事が終わった後に、みんなで子どもたちを教育して、「困ったら、あのプロに聞けば何でも教えてくれる」。そんな集落があれば、きっと移住したくなりますよね。

「自分で生み出す暮らし」を知るきっかけに

_今回のツアーは、空き家の活用をきっかけに、参加者がまちづくりの一員として携わることができ、移住を検討している方にとっても、日々の暮らしに近い体験ができる内容になっています。いとうさんは、このツアーを通して、参加者や地域にどんな変化やつながりが生まれることを期待されていますか?

I_外から人が来ると、地域の魅力や価値を掘り起こしやすいし、地元の人も心を開きやすくなるんです。

次は、レコーディングスタジオをオープンする予定で、和歌山在住のアーティストに、1週間前からスタジオに滞在してもらいながら曲をつくってもらう企画を考えています。そして、10月18日のオープン日に、そのスタジオで制作した楽曲をライブで披露してもらう予定です。

こうした経済活動のプロセスをオープンにし、関わる人すべてが当事者になれるような仕組みを一緒につくることで、この集落に新たな注目が集まるのではと考えています。この集落の再生は、まだ始まったばかり。何かを始めたい方には、ぜひ、これから一緒にスタートラインに立つ仲間になってほしいと思っています。

_今まで手がけられてきた場づくりや、今回のレコーディングスタジオの取り組みも含めて、冷水浦にはこれから新しい動きがどんどん生まれていきそうですね。単に建物を直すだけではなく、そこで何かを生み出していくプロセスそのものが、地域に新しい選択肢を増やしているように感じます。

I_田舎に行くと選択肢が少ないと思われがちなんですが、実は都会よりも選択肢が多い場合もあります。便利さが整った都会では“選ぶ暮らし”が主流ですが、地方には“自分で生み出す暮らし”の面白さがあります。どちらが良いという優劣ではなく、自分にフィットするのはどちらか。冷水浦での「手を動かす体験」が、そうした自分ごとの視点に繋がればいいなと思っています。

いとうともひさ | 1985年生まれ。神戸芸術工科大学環境デザイン学科卒業後、大工修行を経て独立。全国各地を転々としながら旅先の現場に仮の住まいを作り、完成させてはまた移動するスタイルを続ける。空き家との出会いから冷水浦に辿り着き、仮の住まいを作りながら工事を続けている。〈Re SHIMIZU-URA PROJECT〉主宰。旅する大工。https://itoutomohisa.jp/
参考:umigiwa profile 和歌山県海南市冷水 / 前田有佳利(noiie) 

和歌山県他とは「海南海草地方広域観光協議会」のことを指し、その構成団体は海南市、紀美野町、海南商工会議所、下津町商工会、紀美野町商工会、一般社団法人海南市観光協会、紀美野町観光協会、和歌山県海草振興局となります。 

【和歌山県他主催】冷水浦・空き家再生からはじまる、新しい地域共創の体験ツアー

日程:2025年10月11日(土)
集合&解散:8:00〜

参加のご応募について/下記リンクよりお申込み下さい。

・ツアー参加する前におすすめ
ツアー開催前に、内容をより深く知り楽しめる講座を開催します。詳細は下記リンクよりご覧ください。 (参加費 無料)
【和歌山・冷水浦発、共創のまち育て~眠れる町に灯をともす いとうともひさの暮らしづくり~】 
9月20日(土)14:00-15:30 阪急グランドビル開催 / オンライン開催

ABOUT TOUR:ツアー詳細

10月11日(土)
8:00 集合/大阪駅

おはようございます!大阪駅で集合したら貸切バスにて和歌山駅経由冷水浦へ向かいます。

10:00 冷水浦到着・オリエンテーション・アイスブレイク/チャイとコーヒーとクラフトビール

「チャイとコーヒーとクラフトビール」店内

冷水浦に到着したら旅程のオリエンテーションを行います。参加者同士の自己紹介や参加したきっかけなどの交流で皆さん心を通わせたところで、いとうさんのご案内で集落内の散策をします。まずは地形やまちのスケールを感覚的に楽しんでみましょう。

【衣食住】に関する3つのワークショップを全参加者にご用意
11:00~12:15 【衣】 5本指ソックスの仕上げ「キズミ工程体験」(ニッティド 井戸端佑磨さん)

ショップを含む複合施設をオープンさせるなど地域に積極的な活動を行う、5本指ソックスのパイオニア ニッティド井戸端佑磨さんのお話と編み機で仕上げた5本指ソックスを目視でチェックし手作業で補修、整形を行う最終工程"キズミ=傷を見る"工程体験に参加します。ご自身で仕上げたソックスはそのままお持ち帰りいただけます。

12:15~13:00   昼食 /チャイとコーヒーとクラフトビール

昼食は地元の農家さんが作った"八朔とシラス出汁の香る紀州ビリヤニ"をご用意しています。和歌山の魅力が詰まった一皿をお楽しみいただけます。

13:00~14:30  【住】 建築の解体体験とタイル作り体験(Re SHIMIZU-URA PROJECT いとうともひささん)

①   建築の解体体験
建物の外壁解体を行います。その解体した資材を使い、オリジナルの一輪挿しを制作するワークショップを行います。
②   タイル作り体験 
セメントタイルもしくは廃材土壁タイルを作るワークショップを行います。

14:30~16:00  【食】みかん援農、「KAMOGO」の活動や今の農業を知るお話(FROM FARM 大谷幸司さん)

海南市下津町出身でUターンをきっかけにドライフルーツなどの農産物加工品を製造販売する「FROM FARM」 大谷幸司さんにバスに同乗いただき、地域外から農業に関わり人手不足を補う仕組み、みかん援農や旧JAの支店をリノベーションしたカフェ「KAMOGO」の活動など海南市下津町の農業の現状などお話しを聞きながら下津エリアみかん園に向かい出発します。

14:45 下津エリアみかん園地にて、極早生品種(YN26)収穫体験と農家さんのお話

みかん園主 戎映樹さんと援農参加者で就農予定の梶本雄一郎さんのお話を伺いながら極早生品種の収穫体験を行います。

15:15 下津大崎エリアをバスで周遊

下津地区の沿岸部をバスに乗りながら周遊します。海や段々畑が広がる風景をぜひ堪能してください。カフェ「KAMOGO」に立ち寄り、見学してからテイクアウトでドリンクを楽しみます。

15:40 冷水浦に向けて出発

道の駅「海南サクアス」に寄り、新鮮な海の幸やみかんなど海南ならではの特産品やお土産を購入できます。

16:30 みんなでアウトプット (ブレスト・フィードバックセッション)

ツアーの振り返りとして、参加者同士で感想や学びを共有します。1年に1軒ずつ新たな施設を開業することを目指し、アイデアや気づきを共有しながらお互いの理解を深め、地域における新たな価値創出を図ります。

17:30 冷水浦出発

貸し切りバスにて和歌山駅経由で大阪へ

19:30 大阪駅到着・解散

今回ツアーに参加いただいた方対象に11月1日(土)おかえりバスを運行します!無料で大阪から冷水浦を再訪できます。ツアー参加をきっかけに、今後も中長期的に地域と関わっていくための第一歩としてご活用いただければ幸いです。

・ツアー参加する前におすすめ
ツアー開催前に、内容をより深く知り楽しめる講座を開催します。詳細は下記リンクよりご覧ください。 (参加費 無料)
【和歌山・冷水浦発、共創のまち育て~眠れる町に灯をともす いとうともひさの暮らしづくり~】 
9月20日(土)14:00-15:30 阪急グランドビル開催 / オンライン開催

・ツアー参加した後におすすめ
また、今回ツアーに参加いただいた方対象に11月1日(土)おかえりバスを運行します!無料で大阪から冷水浦を再訪できます。ツアー参加をきっかけに、今後も中長期的に地域と関わっていくための第一歩と
てご活用いただければ幸いです。